心療内科医笹田信五のカウンセリングルーム
離婚したい
最近、離婚はめずらしくありません。私の診察室でも、詳しくお話を聞いてみると肥満や更年期障害の奥底に、その葛藤があることに気づくことがよくあります。
ただ、本当の問題点は別の所にあり、離婚では何の解決にもならないという場合も多くあります。離婚してからでは取り返しがつきません。そうならない前によく考えてみたいと思います。
「先生、主人と別れようかと思っているんです」
「どうしてですか?」
「ここ数年、主人は私の話を全然聞いてくれません。うるさい、どこへでも行ったらいいだろうと言うのです。情けなくて悲しくて、それならいっそ別れたほうがいいと思うんです」
「本当に別れたいのですか。そんな風には聞こえませんよ。本心は逆ではありませんか」
若い女性の話かと思われるかもしれませんが、このように訴えられているHさんは、60歳の女性です。結婚以来、二人三脚でご主人の事業を一心に支えてこられました。
「今までは何でも主人と話をしながらやってきました」
「どうして、そうできなくなったのですか」
「数年前から、私は仕事一筋ではなく、もう少し人生を楽しみたくなったのです。このままでは、何のための人世か分かりません。それを言うと主人は怒るのです。以前は、滅多に怒ったことのない人でしたのに、別人のように感じるときもあります」
「それでは、ご主人が変わったと言うよりは、あなたが変わったのではないですか。以前と同じように、仕事一筋でご主人を支えれば、またうまく行くのではありませんか」
「でも、それはもう空しいのです。十分食べていくことはできるのですから、主人と共にもう少し余裕のある人生を送りたいのです」
「ご主人は、まだ仕事は十分だとは思っておられないのでしょうね。もっと拡大したいと思っておられるのでしょう。そうすると、今までは同志だったあなたが、仕事をするなと言うのですから、時には敵のように思えて腹立たしくなることもあるかもしれませんよ」
「これでは一緒に暮らしていても辛くてしょうがありません。やはり別れる以外ないでしょう」
「別れるのはあなたの自由ですが、根本の問題は何も解決しませんよ。あなたは、もう他人の山を登りたくないのですから、解決は、あなたが、生かされてる医学の5つの発見を学び、自分の山を登ること以外にはありません。これからは自分の山を登る練習をしましょう。
あなたが自分の山を登って、生きている感動と喜びを感じれば、結果として、ご主人も仕事という山ではなくて、自分の山を登ることの素晴らしさに気が付かれるかもしれません」
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