心療内科医笹田信五カウンセリングルーム

「プラス思考、前向き」は逆効果  

 
  「プラス思考をしよう」、「前向きに考えよう」とよく言われますが、心身相関を理解すれば、これは場合によっては逆効果であり禁句であることがよく分かります。

 プラス思考ができるのは、まだ身体も心も元気なときです。
本当にどん底まで落ち込んだときには、プラス思考はできません。前向きになれません。

  そうしようと思えば思うだけ絶望的になるのではないですか。前向きに考えようとしても、何もできない自分を攻めるだけです。それでは、自分に対してさらに強いストレスをかけているだけです。

  人間は約75兆個の細胞からできていて、全体をうまくコントロールするために、自律神経系、内分泌ホルモン系、免疫系などが働いています。そして、これらと心は一体となって動いており、心身相関と呼んでいます。

  ですから、この強いストレスは、自律神経系、内分泌ホルモン系、免疫系の上に爆弾を落とすのと同じことになります。

  さらに、ストレス発散のために過食・お酒・タバコが必要となり生活習慣が悪化します。その結果、肥満、自律神経失調症、高血圧、糖尿病などが発症する。これが心身医学的な理解です。

  心身ともに疲れ切っているときに、「前向きにならなければならない」と思うこと自体が強いストレスです。さらに「何もできない」という挫折感は、徹底的に心身相関と生活習慣を悪化させて健康を破壊します。

  疲労感、無気力、不眠、頭痛、食欲減退などの症状が強くなり、最後には病気を呼び込んでしまいます。

  まして、人は歳をとり最後は死ななければなりません。死に直面してどんなプラス思考があり得るのでしょうか。元気な人はサポートする必要はありません。

  プラス思考もできない人にこそサポートがいるのです。その時に「元気を出せ」は残酷ではありませんか。

 また、「あなたなら出来るはずだ」とか「皆が期待しているよ」とかいう励ましは、
「今のあなたは駄目ですよ」と言っているのと同じです。崖プチに立っている人の背中を押すことになります。最悪の場合は自殺にまで追い込みます。

  疲れ果てたときは、誰とも会わず頭から布団をかぶりひたすら寝てください。少し疲れがとれたら、生かされてる医学の5つの発見を学んでください。
「他人の山」を登りたいのか。「自分の山」を登りたいのか。自分の心を正直に見つめ、とことん考えてください。

  何かが見えてきます。そうです、あなたは本当は「自分の山」を登りたいのではないですか。
たとえかすかでもその思いを発見したとき、霧が晴れていくのが感じられるでしょう。

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