心療内科医笹田信五カウンセリングルーム

疲れました。親のために結婚します



  K子さんは36歳の女性です。短大を卒業後、激しく仕事をしてこられました。

  普通、短大を出て就職しても、本人も会社も気楽に考えるところでしょう。しかし、K子さんはそれが嫌でした。反発を強く感じて、懸命に仕事をされました。

  のおかげで周囲が認める存在になりました。さらに、その能力を認められもっと大きな仕事からスカウトされました。

  しかし、最近は疲れ果てて思うように能率も上がらなくなりました。人知れず苦しんでいました。「退職しょう」、そう思って疲れた心身を癒すために私のところに来られました。

  「先生、今まで親や周囲の人の言うことはいっさい聞かずにやってきました。それでこんな状態になりました。やはり人の言うことは聞かなくてはならないと思いました」。

  確かに、K子さんの顔は黒ずみ疲労が染みついています。この年齢の女性としては、ボロボロと言うべき状態です。

  「これからは、人の言うことを聞こうと思います。特に両親には心配ばかりかけてきたので親の言うことを聞くつもりです。つまり、親は結婚して欲しがっています。もう、歳も歳ですし、そう思いお見合いもしています」

  「それで、良い相手と出会えましたか」

  「いえ、お見合いはするのですが、結婚しょうと思う相手はなかなか見つかりません。でも、なんとか結婚しょうと思っています」、そのように語るK子さんの表情は、無気力で沈んでいます。

  「ちょっと待ってください。あなたは今まで人の言うことを聞かなかった。それで行き詰まった。だから、今度は人の言うことを聞こうと言われていますが、それは本当でしょうか」

  「本心です」

  「しかし、いままで懸命に仕事をしてきたのは、何のためでしょうか。やはり世間の拍手が欲しかったのではありませんか。楽しくてやっている仕事や、本当の自分を発揮するための仕事なら、そんなにボロボロにはなりません。

  確かに疲れたとしても、放棄しようと言う気持ちにはならないでしょう。世間の評価を求めて仕事をしてきたために、空しくなったのではありませんか。思うように世間の評価が得られなくなったので挫折したのではありませんか。

  親の言うことは聞かなかったが、世間の言うことは聞いたのではありませんか。親からよりは世間からの評価が欲しかったということではないですか。だから、それは他人の山を登る生き方です

  世間からの評価が得られなくなったから、今度は親の言うことを聞くでは、他人の山に変わりはありません。
  まして、親のためにというような気持ちで結婚しても、うまくいくはずはないでしょう。そんな生き方に満足できますか

  「確かに満足できないと思います。そう言われれば、何度お見合いをしてもその気持ちにならないのはそのためだと思います」

  「そうですね。拍手が欲しいということは、自分を感じたいということです。あなたは人一倍自分を感じて生きたいのではありませんか。その方法が、世間の拍手であったでしょう。

  それならば拍手を求めて結婚してもまた挫折するだけですよ。今度は離婚になるか、世間体を考えればそれもできず我慢の人生ということになります。

  何度も同じやり方で挫折するのは人生が無駄になります。ますます悪循環に落ちていきます。拍手を求める生き方が挫折したのですから、もうその方法はやめませんか。

  自分を感じるほうを優先しましょう。自分を感じる確実な方法は、自分の山を登ることです。せっかくの機会ですから、今回を自分の山を登る生き方の出発点にされませんか。

  自分を生きさえすれば、後はどちらでも良いことです。結婚というのは、貧しい時代の制度です。豊かな時代では制度にとらわれる必要はありません

  結婚はしたければすれば良いし、したくなければしなくても良いことです。そのことは自分の山を登っていけば自然と分かります。

  もし、あなたが自分の山を登れれば、あなたのご両親もそれに気づかれるかもしれません。ご両親もやがては年老い死ななくてはなりません。常識的な生き方をしていれば、それは虚無になることです。

  本当の自分を生きることは、常識の世界とは全く違った感動と喜びの世界を生きることになります。それは、最大の親孝行でしょう。ですからまずは、本当の自分を生きることを始めませんか」

  K子さんの表情に、少し安らぎと明るさが戻ってきたようです。現代のような時代では、このような悩みを持っておられる方は少なくないでしょう。無駄な苦しみをないためにも、少しでも早く、生かされてる医学の5つの発見を学び、「自分の山」を登り始めませんか。


   

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