心療内科医笹田信五カウンセリングルーム
   
  
E子さんを追いつめて
いるのはお父さん?!
        
   
  E子さんは、25歳の未婚の女性です。小さいときから、大変良い子で、勉強も非常に良くできました。それが、最近、ひどいうつ状態になったということで来られました。

 
  お話を聞くと、海外青年援助隊のようなものに加わり、東南アジアへ行ったが、足を骨折して仕事ができなくなった。その後回復してからも焦るばかりで成果が上がらない。期待されていたのに、こんなことになってしまい、自己嫌悪でいてもたってもおれないという状態でした。

 お父さんから何度かお電話があました。「娘はどうでしょうか。なんとか自信がつけばと思い励ましているのですが...」というような内容です。「問題は自信がないからだ。ファースティング(絶食療法)をして自信がつけば解決する」、お父さんの考えはこのようなもののようです。
                                     
  お父さんもお母さんも学校の先生をされており、いわゆる立派な家庭です。E子さんは、「立派な人間でなければならない」という価値観をもちました。しかし、それは社会的に立派ということであり、「他人の山」に登ることです。

  一方では、「自由に自分を生きたい。自分の山を登りたい」という気持が心の底にあります。東南アジアへ行ったのも、両親から離れて自分を生きたいという気持からでした。
                                  

  しかし、足の骨折で仕事ができなくなると不安になり、「立派な人間でない自分は駄目だ。一刻も早く世間から評価を得ることをしなければ」というご両親の価値観が心の中で戻ってきます。
                                

  充実感があるときは、自信もあり、親から受けた価値観から自由でいられますが、つまずき自信が無くなってくるともう駄目です。社会的に立派な人間という「他人の山」を登ろうとする自分と、「自分の山」を登りたいという自分が葛藤しパニックになっています。焦りと自己嫌悪で自滅していきます。
                                     
  「お父さん、その考えが娘さんを追い詰めているのです。娘さんを苦しめているのはご両親の価値観ですよ。お父さん、お母さんが自分の山を登らない限り娘さんは良くなりませんよ」。

  電話口のお父さんの声は、とうてい私の声が心に響いているようには感じられません。まだまだ娘さんだけの問題と思っておられるようです。問題はきわめて深そうです。
                                
 
  ルネッサンス文明の終着駅であった「物の時代」が崩壊しました。そのため、政治、経済、教育、医療、宗教とあらゆる分野で混乱と混迷が起こっています。しかし、「心の時代」はまだ見えません。

 
「心の時代」とは、「一人一人が本当の自分を生き、自分の山を登れる時代」ですが、そのための方法もシステムもまだありません。「他人の山」を登るための教育やシステムばかりです。
                                       
  お父さんとE子さんとの間で起こっているのは、個人の問題ではなくて時代の問題です。安易な解決法はないのです。新しい時代の新しい価値観、原点、生き方とそのサポートがいるのです。そして、それが「生かされてる医学」です。

  「生かされてる医学」から見れば、焦りや自己嫌悪や自滅は、無用な苦しみです。「本当の自分」を生きるトレーニングができていないことからくる苦しみです。無用な苦しみはもうやめて、早く
生かされてる医学の5つの発見を学び、「本当の自分」を生きることの出発をしませんか。

                             
前ページへ