実例の方々を見ていると、過食と拒食の原因になっているものは、人間関係のストレスや、自分を十分発揮して生きれないという苦痛、さらにスリムであることが価値であるというアイデンティティーの問題と思われます。そこで「ストレス発散タイプ」と「スリム願望タイプ」に分けてみました。
                                     
  どちらのタイプも、苦しみのダイエットになり、過食と拒食をくり返すことは同じですが、この悪循環に陥る最初の原因が違います。

  「ストレス発散タイプ」は、人間関係や自分を発揮して生きれないというストレスが原因で過食となり、「スリム願望タイプ」はスリムであることがアイデンティティーという価値観にこだわって拒食することが原因で、逆に食欲を増進させ過食となります。

 そして、一旦過食になってしまえば止めようとしても、それは無理というものです。もう食べられないということ自体が強いストレスですから、今までのストレスに、食べられないストレスが加算されます。このストレスの解消のためさらに過食となります。そして、自分を責めたり周りの人を攻撃して精神状態もどんどん悪化して悪循環は強まっていきます。

  なぜ、これ程までに人間関係でストレスを感じるのか、自分を発揮して生きたいのになぜできないのか、なぜスリムであることがアイデンティティーなのか、その理由を明らかにしない限り、過食と拒食で貴重な青春や人生が終わってしまいます。そうならないために、原因を考えてみましょう。
                                       

1.人間関係のストレス

  日本は、敗戦後50年で世界で最も豊かな国になりました。だから、世代間で生きた環境が大きく違います。終戦後のやみ市の敗戦世代、高度経済成長の団塊の世代、物があふれる若い世代の間で、価値観やフィーリングが大きく異なるのは当然です。

  その人たちが、上司、部下、嫁、姑として一つ屋根の下で生きているのです。自分では良いと思って提案しても、相手はそうは受け止めてくれません。言葉が通じなくなり人間関係は複雑になります。しかも、決定権やお金は年配者が握っています。これではストレスにならないはずがありません。
                                       

2.自分を発揮して生きれない苦痛

  貧しい時代では、我慢して国や家族のために一生懸命に働かなくてはなりません。個人の自由を束縛するしきたりや掟も厳しかったですが、ご飯を食べられるという喜びや、頑張る人には皆から拍手が来て充実感を感じられるという代償がありました。

  豊かな時代には、そんなに国や家族のために頑張る必要がなくなりました。つらい勉強や仕事に耐えることの必要性も薄れました。衣食住から解放されました。 しかし、束縛は残っています。若い世代の方にとっては、学校や会社や家庭は指図や束縛はあっても、それに耐えることの意味も代償も希薄な所となりました。

  特に、女性にはむずかしい状況です。平等という言葉はあっても、活躍する機会はやはり制限されています。もっと自分を発揮して生きたいと思う方には苦痛でしょう。自分を生きることができません。
                                        

3.スリムがアイデンティティー

  全員から拍手が来るのは、貧しい時代のように国や家族のために頑張ることが良いという共通の価値観があるときです。価値観の多様性の時代では、自由ではあるが何をしてもたいして拍手が来ません。地道に努力するのは疲れるし、しても拍手が来ない。これでは努力する気にもなりません。

  しかし、拍手がなくては自分の価値を自覚できません。たった一人で自立できるほど強くはありません。自分の価値は目一杯感じたい、生きている実感を得たい、生き生きと生きたい。そのためにはやはり拍手がほしい。そのような中で、唯一全員の拍手がくるのはスリムであることです。だからこそスリムであることが若い女性のアイデンティティーとなったのでしょう。

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